-10- 第252号  TokyuBunka Times  昭和52年10月11日

ようちえんだより

創立者の建学の精神を心として
一粒の種の成長した姿を想う

“浅間高原緑の牧場で

「小さな種から牙を出して
 こんな大きくなったのは
 大きい木、大きい木
 大きい木……」


明る一いはずんだ声が今日も保育室の窓から澄んだ空へ向って流れていきます。今年は学園創立五十周年記念の年、学園の父とお慕い申し上げている新渡戸稲造先生が、この地に播かれた一粒の種の成長した今日の姿を想う時、神の御守りを感謝すると共に、種を播か心た創立者の深い信仰に根ざした独学の精神を心として日々の保育に励みたいと祈るこの頃です。
「先生、これあげる」。嬉しそうに登園して来たEちゃんが、そっと開いた可愛いい手の中には朝顔の種がありました。「昨日ね、お柿ちゃまととったの、四十四個もあった。まだ沢山あるから明日また持って来てあげる。」五月初めのある日、年長組さんは自分の鉢の中に黒い小さな種を二拉ずつ播きました。涼しすぎる日や、雨が続いたりして、なかなか牙が出ないのもあって心配した時もありましたが、夏休み前には竹を立ててそれぞれの家に持って帰ったのでした。Eちゃんはきっと、夏休みの間も、毎朝一生懸命水をあげたのでしょう。二拉が四十四個に私はEちゃんの手から自分の手の中へ種を移しながら、自然の中に働き給う神のみわざのすばらしさをしみじみと感じました。
 柿も栗も、いのこづちもどんぐりも、みのりの時を迎え、神の愛の中にすっぱりと包まれている事を思う秋です。子ども達もまた充実期を迎えて、生き生きと活動しています。「何してるの」「見せて!」「「入れて!」「ぼくもやろう」と、どんな事にもとびついて参加しくるのは知識欲、探究心のあらでしょうか。特に年長組さんは浅間高原での生活が積極的に行動する原動力になっている様です。
 「あと、七つ寝たら浅間へ行んだね」と指折り数えながら、リュックサックの荷物を出したり入れたり練習を重ねて楽しみに待っていた浅間高原の宿泊保育は、今年もすべてに恵まれて感謝のうちに楽しい生活をする事ができました。美しい・山々に囲まれたみどりの牧場では、誰も彼もかわいい山羊達とすっかり仲好しになりました。キャンプファイヤーの夜には、生まれて初めてはたるの光見る事もできました。子ども達すばらしい成長と共に”子ばなれという点で得がたい経験でした”と感想をお寄せくださったお母もあり、親も子も一つの階段を登って前進する事ができた様です。
 はっきりと目には見えないけど一番大切な宝もの、何年か先に光りだす宝石を、浅間高原の生活は今年も一人一人の心の中に残してくれました。
(丸 翠)




同窓会

母校の発展に力を合わせて
心のふれあいの場としての同窓会に

 創立五十周年の記念行事におきましては、同窓の皆々様の心からなるご協力をたまわりましてありがたく存じております。白井会長ともども感謝申し上げます。
 教育機関におきましては一日として止まることはできませんで、私は理想と現実の錯綜の中に身を置きつつ悩み考えながらの毎日を送っております。
新教育課程における五つの柱

一 ゆとりのあるしかも充実した学校生活
二、知・徳・体の基地と基本を確 実に身につけさせる教育
三、自ら考え行動する個性能力と連帯を重視する教育
四、教育の教育愛と創意工夫に支えられる教育
五、21世紀の世界に生きる日本人の育成

これを繰り返し読む時、新渡戸先生、森本厚吉先生の学校教育に対する進歩的な教育観に頭が下がります。この五つの柱は、戦前戦後の月日に左右されることなく、東京文化学園の教育に実践されていたのです。私は教師生活を長年にわたって続けておりますが、母校で学んだことがどんなに自分を支え、生徒を指導する上で助けられているか言葉に尽くせぬものがございます。
 近頃なんのために同窓会があるのかと疑問をもつ卒業生がいると聞いておりますが、私は五つの柱の下に学んだ仲間たちの真の心の触れあいの場だと信じています。 普段はそれぞれの道に忙しく生活している私共が、心の触れあいを求めて帰る場、同窓会をもっていることは幸せだと存じております。
 母校の五十周年にあたり種々参考書をひもとき、また座談会のための勉強をします間に、今日の学絞教育では得られない恩師の教えに出合うことがでさました。学園を軸として同窓会は会長を中心に各校の幹事長を助け、外郭団体の一端として母校の発展にお役にたてるならば、この上ない喜びでございます。誇りのもてる母校のために、これからも皆様心を合わせてまいりましょう。

同窓会副会長 湊 くに
 創立五十周年記念式典には、会場が手狭のため、同窓生の皆様をお招きできません。事情を御覧察の上、体育館建設が実現する迄お待ち下さるようお願い致します。



発行所
  東京都中野区本町6の38の1
  (電話 381-0196〜8)
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発行人:森本武也
編集人:小松洋子
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