-7- 第338号  TokyuBunka Times  平成12年12月10日

小学校

芸術の会をささえた様々な思い

音楽科 森 典彦

 毎年、「芸術の会」の感想文を保護者の皆様に書いていただいている。“アンケート”と称して小学校全家庭に配布した今年のアンケー卜の冒頭に子ども達一人ひとりの音楽性はたとえるとダイヤモンドの原石であり芸術の会への過程はその原石を一磨きすることだと書いた。
 誰が名付けたかは定かでないが「芸術の会」の名称は毎年必ず誰かが疑問を呈する。「小学生と幼稚園児が芸術でもないでしょう」というのが主旨である。確かに芸術の定義は固苦しい。高尚っぽい。しかし、芸術は人間のためにある。ここまでは子供の音楽、ここからが大人の音楽とは明確に分けられない。また、子どもの教育で最も期待される重要なことは“本物(あるいは極めて近いもの)”とのふれ合いと出会いだと思う。発達する人間である子ども達の未成熟な感性にこそ本物が必要なのだ。その本物の一つが音楽における“芸術なるもの(音楽的な全ての感動と言動)”と言えるだろう。
 そんな私の意気がった本音に目を通して下さった後、保護者の方々が思い思いに“芸術の会”についてつづって下さった。
 一、二年生はいつも歌っておどる。そして笑顔100%。別に笑え!とおどしている?訳ではない。楽しくて仕方がないらしい。その姿を見て「元気があふれていて、気持ちいい」と異口同音に評される方が多かった。中には毎年100%の笑顔でおどっているので少し形態を変えて違ったことをやったら?などという建設的な御意見までいただいた。一つ申し上げたい事はあの笑顔とうたっておどり狂っている様子が授業の集大成だということである。次に、四年生の「見上げてごらん夜の星を」で実は多くの保護者の涙腺をゆるめてしまった。子どもに訴かれて「ううーん、ないてないわ」 とその後ごまかしている保護者の状況を子ども達が何人か目撃している。 「野菜の気持ち」というア・カペラのボイスリズムは大変インパクトがあった様で難しさと強弱から音楽を感じていただいた様だった。「指揮者(私)も力が入り熱のこもった野菜達でした……」と御感想をいただいたが、全部を各パートごと暗譜して私に合図を要求していたのは子ども達であったことを明記しておきたい。五年生は合奏だった。「親のよく目でしょうが今までの5年生の中で最高のものだったと思います…」という感想が多かった。決して欲目ではなく、担任の絶大な協力と子ども達の集中力が発揮されれば、このくらいは当然というくらい、五年生の潜在能力を垣間見た。六年生もまた器楽合奏だったが、ビバルデイの「春」の中でアコーディオンのソロパートを入れたりしたので、五年生とは違った味わいになったようだった。今年は五年生と六年生がお互いに演奏を聴き合ったれしたので、いい刺激になったのかもしれない。三年生は毎年オペレッタを上演する。今年は担任のオりジナル脚色と作曲ということで、ちょっと心配だったが、ベテラン朝倉教諭のリードで衣しょうに関するお母様方のトラブル(?)も見事に回避し評判が良かった。只、長年、文化小を応援して下さる方々の中には「外見がハデになった分一人ひとりの地味な努力が隠れてしまって、文化小の良さが失われつつある」という厳しい苦言をなげかけられた方もおられた。心して受けとめようと思う。また「ゼロホールという大きなホールで自分の子ども以外の子を見るのは退屈でしかない。自由に出入りできる小学校講堂でやって欲しい」という意見もお一人いらした。これは、音楽あるいは音楽会の本質を考をる時、確かに一理ある意見だ。しかし、ゼロホールのあのピアノでショパンコンクールの入賞者が演奏することだってある。今をときめくプロの演出による演劇だってゼロホールでやっている。つまり、日本でも有数の本物のホール、それが“ゼロ”なのである。従ってゼロでやる意味は極めて大きい。“退屈”ならば無理しないで欲しい。その替り、子どもが大切な勉強に飽きて遊んでいても自由に太せてあげて下さい。
 書いて下さった全ての御感想は貴重なものです。その一つ一つに心から感謝いたします。


こども こども

じょんのびキャンプ


理科 岸下健一

 去る8月9日より二泊三日の行程で、科学部こ音楽部による夏季合同合宿を行いました。場所は新潟県高柳町「じょんのび村」です。実は、「じよんのび村」は、地図のどこを探しても見当たりません。とても美しい「じょんのび」という方言のもと、高柳町に、そして私たちの心にある桃源郷として実在している村です。今回の合宿はこの「じょんのび」を発見する合宿でもありました。
 内容はとても豊か、カヌー、ホタル狩り、餅つき、キャンプファイヤー、紙スキ、ブナ杯、きもだめし、取りたての野菜、そして満天の星空。天体観測は天候の都合により三日目深夜、二時より行われました。天が落ちてきそうな星々に圧倒されながら、確かに天は動いている、(地球が自転している)ことを実感しました。そして、故人が心を傾けた豊かな天球の音楽を聴くことができました。
 合宿の合い言葉は、「おかわり」と「いそぐな」。東京での「もうたくさん」と「いそげ、いそげ」と時間に追われる毎日とは全く違う経験でした。では「じょんのび」とはどのような意味なのでしょう。子どもの感想文よりいくつか紹介します。

 「じょんのびという意味は、思いっきり楽しんだという意味かなぁと思います。」(4年Y・E)
 「じょんのびの意味。のびのびでいいこと、だと思います。」(4 年W・M)
「ぼくはじょんのびとはいろんなことをしてげんきにすごすという意味だと思います。」(4年S・T)
 「じょんのびというのは、この自然で楽しく遊んでゆっくりすることだとぼくは思います。」(5年K・S)
 「私の思ったじょんのび村は、空気、人、自然だと思いました。」(4年T・M)

 二十一世紀が「じょんのび」の世紀となりますように。


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