-7- 第348号  TokyuBunka Times  平成16年3月8日

小学校

小学校飼育日記

理科 岸下健一

photo 小学校に一歩入ると、左手に大きな水槽が目につきます。寄贈されたアジア・アロワナが悠々と泳いでいます。上向きについた口は、水面に落ちてきた昆虫などを食べるのに適した形をしています。その食べるときの迫力は一度見たら忘れられません。夏から秋にかけて、小学校周辺にツヅレサセコオロギが鳴き響き、アロワナのメインディッシュとなります。
子ども達に根強い人気があるハムスター。ハムスターは繁殖が容易なため、理科の単元にある「生命のつながり」を学習するうえで最適です。ハムスターの妊娠や出産に真っ先に気づくのは、いつも触れている子ども達で、生まれたばかりのハムスターを見ようと行列ができることもあります。「チーチー」と母ハムスターにミルクをねだる鳴き声が何ともいえません。

ミチルちゃんという愛称で親しまれているシマリスは、夜行性のハムスターと違い、日中に活動をします。静まり返った授業中の廊下に、回し車の音がこだましていれば、それはミチルの仕業です。もう一つ、小学校の音風景をつくっているウズラは、言葉では表現できない鳴き方で鶴の一声ならぬ、ウズラの一声を発します。鳴くのはオスのウズラで、江戸時代には武士の間でウズラの鳴き合わせが流行っていたといいます。キジ科の鳥で、良く見ると、とても美しい羽をしています。特に、冬毛はきれいです。
小学校には天然記念物もいます。オカヤドカリがそうで、実は、天然記念物であるにもかかわらず、お祭りの屋台で売っていたりもします。沖縄などの熱帯に生息し、名の通り水中ではなく陸で生活します。ただ、オカヤドカリの引越しを見たのは、今のところ小学校で私だけです。入念に引越し先の貝殻を調べ、一気に乗り移る姿を、理科準備室の窓越しに観察しました。オカヤドカリはとても臆病なのです。
子どもの頃、誰もが経験したであろうザリガニつり。初夏には、蚕糸の森公園でザリガニつりが楽しめます。アメリカザリガニは泥っぽい汚い水にいる印象がありますが、濾過ポンプのあるきれいな水槽で飼育すると、ザリガニ特有のスタイルに惚れ直すことができます。移入種であるアメリカザリガニとは違って、おくゆかしさを感じてしまうクロメダカ。今では絶滅の危機にある貴重な魚となってしまいました。小学校で飼育しているクロメダカは千葉県で採集されたものです。
「メダカの学校」で歌われているような小川が再びこの都心でも流れますように。小さな命に接する環境を、少しでも整えていきたいと思います。


photo


こども こども

今年も元気だ文化っ子


小学校長・幼稚園長 福田景三郎


 「先生、校長先生、来ていただけますか。」
「先生、お願い、来て、来て。」
 四年生と三年生のお友達が、朝、校長室へ飛び込んできました。
 今日は学級朝礼で全校放送による朝礼です。私が週の聖書を読み、お祈りを捧げ、そのあと短いお話をします。ちょうどそのお話を考えている時でした。頭の中をいくつものお話がいったりきたり。
「えー、えー、何だっけ。どこ行くの。」
 いくら何でもこの二月初旬、こういう質問をしてはいけません。
今、文化場所の真っ最中。行くべき所は当然講堂に決まっています。そこには立派な土俵があります。朝早くから放課後まで一年生から六年生まで毎日お相撲をとっています。
「あ、うん、行くよ。必ずいきます。三分間待っててくれる?」
さっさっとお話を決めて、さあ出陣。講堂にはもう三十人位のお友達が待っていました。安全のためお相撲をとる時は必ず先生が一緒でなければいけないことになっています。
 朝は、先生方は大忙し。みんな走るようにして学校中でお仕事をしています。校長先生が一番ヒマと子ども達は知っているのです。
「ハッケヨイ、ノコッタ。」
「よし、よし、上手、上手。あっ、おしい!」
「がんばって!」
「キャー、勝ったあ。」
「えっへん、すごいだろ。」
 四年生同士、二年生と三年生、六年生同士。寄り切ったり寄り切られたり。外がけ、内がけ、みんな顔を真っ赤にしてがんばっています。三年生と取り組んだ六年生。ゆったり受け止めて、しばらく押させて、そしてゆっくり押し出します。六年生のうなずく笑顔に三年生もニッコリ。縦割りのぬくもりが、真冬の学校を温かく包みます。
 みんなが全員勝てるといいんだけどなあ、神様、無理でしょうか。


次へ次頁へ
戻るタイムス目次へ戻る

戻る東京文化短期大学資料室へ戻る

戻る 東京文化学園ホームページへ戻る

Copyright (C) 2004 TOKYO BUNKA GAKUEN