-6- 第355号 TokyuBunka Times 平成18年7月12日

ルネッサンス80プロジェクト
小学校

「小さな小学校の縦割りの良さ」

〜 一学年一学級 〜

教諭 安蔵素乃

 小学校では、ずっと以前から学校生活の中に「縦割り活動」を多く取り入れてきました。
 その中でも特に「縦割り生活班」は、本校の特色のひとつになっています。一年生から六年生までのメンバーが、毎日の掃除の時間に顔を合わせ、校内全部を全員で清掃しています。助け合い、協力しながら活動しています。全校遠足へもこの縦割り生活班で出かけていますから、兄弟のような関係が自然に生まれてくるのです。
 入学式では、六年生が一年生と手をつないで入場してきます。二年生から六年生までの上級生の入学を歓迎します。
 一年生がお世話になるのは、何と言ってもやはり最上級生です。六年生は、毎年一年生のお世話をとても楽しみに待っています。四月には朝の身支度を、給食が始まると配膳の手伝いをしてくれます。グループで準備を進めて一年教室へお話を聞かせに来てくれたり、ペアを組んで水泳の着替えを手伝ってくれます。
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▲手をつないで森の中を行進だ
 一年生は、入学後しばらくして二年生とペアを組み「学校探検」に連れて行ってもらいます。学校の中を二年生に案内してもらいながら、校内でのきまりやルールも教わっていきます。五月の「歩く会」では、このときのペアでバスに乗り、手をつないで歩き、お弁当も一緒に食べます。二年生にしてみると、小学校で初めて後輩ができ、嬉しくもあり、緊張もし、大仕事です。縦割り活動でお世話役の第一歩を踏み出し、この経験を通して成長します。
 二年生になると、三年生と一緒に夏のキャンプへ行きます。食事も寝るのも、二・三年生の縦割り班で活動します。初めての宿泊行事で緊張している二年生を三年生がリードしながら手助けもしてもらい、二泊三日の楽しい思い出を作ります。三年生はお楽しみ会を計画運営したり、班をまとめたりしながら、集団生活の中で楽しく過ごす良さを実感し、自信をつけていきます。
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▲川をわたるよ、落ちないで
 三年生は、四年生と一緒に冬の教室へも出かけます。雪遊びをしたり、スキーに挑戦する時も、三・四年生が一緒です。ここでは経験のある四年生が三年生を助けながら、雪国での貴重な体験を積みます。
 そして四年生は、高学年の仲間入りをします。委員会活動、クラブ活動など、他校では五年生から参加することが多い活動も四年生から本格的にスタートしています。四年生は、五・六年生に手取り足取り教わりながら、上級生を慕い、尊敬し、多くを学んでいます。
 子どもが子どもに学ぶことで、驚くほど腕を上げるのは、四・五・六年生が縦割りでチームを組む球技大会です。伝統的にどの六年生も上手に四・五年生を指導するのは、自分達が上手に先輩に教わってきたからなのでしょう。球技が苦手だった子も、積極的に早起きして朝練習に参加したり、昼休みのたびに自主的に練習に取り組み、短期間で驚くほど上達します。チームで頑張る団結の力や共に進む素晴らしさを実感しています。
 クラスではおとなしく、進んで前に出ることが苦手だった子でも、最上級生になると自然に下級生をリードするよい班長になってくれます。教師が教えるからではなく、自分達が先輩達からしてもらった経験があるからこそ、自然にできるようになるのです。子ども達の中に自然に良い伝統を根付かせてくれていると実感しています。 「子どもが子ども達から学ぶ」「子どもが子ども達の中で育つ」「子どもが子ども達同志のかかわり合いの中で生き生きと生きる」そのためのよい環境が、こうした縦割り活動の中にあるようです。子ども達の「生きる力」を育むものは、子ども達自身の中にあるのでしょう。

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▲冬の教室 雪景色がまぶしい


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