-1- 第357号  平成19年3月6日
TokyuBunka Times


ルネッサンス 80

急がず 休まず



 昭和2(1927)年創立の女子文化高等学院に始まる東京文化学園も今年創立80年を迎えます。
 創立80年に向け「文化の復興」を目指した「ルネッサンス80」プロジェクトも大詰めです。
 学園にいくつかある新渡戸先生書の額の一つには新渡戸先生が好んで書いた英文「Haste not, Rest not.」があります。これは、「急がず、休まず」という意味で、文豪ゲーテの言葉です。
 中学・高等学校の教室では、いまでも授業の始まりの挨拶の後で『1分間の沈黙』をおこなっています。
高1「一分間の沈黙」
▲高1「一分間の沈黙」

 1分間の沈黙は、新渡戸稲造が1931年に本校の前身「女子経済専門学校附属高等女学校」の「教職員心得」として残した「一、毎日授業を始むるに当り一分間の沈黙を守ること。」にもとづいたものです。
 これは、新渡戸稲造が国際連盟事務次長の時に、国際会議に際し、会議の効率を高めるため、宗教が異なると対象も異なる「祈り」である「黙祷」ではなく「沈黙」という言葉を初めの1分間に使ったことに由来します。
 八十一年目からも、良き伝統は受け継ぎ、しかしその伝統に甘えず、そして急がず、休まず、学園は確実な歩みをして行きます。


新渡戸稲造 その(5)

意外に気付かない自分自身の埋蔵資源

学務理事 升野 龍男

 「職業観の欠如」と「無気力」。
 これは今の学生に共通にみられる傾向である。
 一方、社会が求めているのは「チャレンジ精神」「主体性」「コミュニケーション力」。この差を埋めるのが、若人の自助努力であり、発育の課題でもある。
 だが人間の可能性は限りなくあるのに、当事者自身それに気付かぬ場合が多い。これは当学園にも指摘できる。我々の埋蔵資源も中にいる人には見えにくいようだ。その代表例が「新渡戸森本研究所」と「3Hボランティアセンター」。老舗は革新の連続によって保たれる。社会との新たな関係価値を作るには、社会ニーズと、その接点となるモノを概念化して積極果敢に情報発信してゆけばよい。
 「新渡戸森本研究所」は先般実施された短大基準協会の第三者評価で、また「3Hボランティアセンター」も文部科学省の特別補助金申請で、非常に高い評価を受けた。
 自己プロデュース。プロ=前に、デュース=引き出す。自分の可能性を引き出し、前に進む行為である。「神は用意周到であるよりも果断であることを望む。なぜなら運命の神は女神だから(マキャベリ著君主論)」。新渡戸博士も著作「一日一言」で、こう述べている。「運は天よりも降れば地よりも湧く。しかし待つ者には来たらで、待たぬ者に来る。地は耕す者のために豊か、寝て秋を待つ者のために穀を与えず」。チャンスは誰の前にも、大河のようにとうとうと流れている。それを掴むか否かは問題意識の鋭さである。


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