[幕あく]
[晴れた朝、田舎みち、遠くに山があり、川の流れが見える]

[さる登場]

〈さる〉
私はお猿　朝寝坊　お腹がすいて　起きてきた
何か食べ物　ないかしら
おやおやなにか　落ちている
なんだいこれは　柿の種
なーんだ変なもの　拾ったな

[さる上手奥へ退場、かにの父下手前から登場]

〈かに〉
私はかにの　お父さん
毎日ここを　通ります
さあさあお家へ　帰りましょ
おやおやなにか　落ちている
なんだろこれは　おむすびだ
やれやれもったいない貰っていこう

[かに、おむすびを拾う]

[さる柿の種を持って出てくる]

〈さる〉
こんにちはかにさん

〈かに〉
こんにちはおさるさん

〈さる〉
おいしそうな　おむすびだね
この柿の種と　取り替えない?

〈かに〉
そうねえ　どうしようかな

〈さる〉
ねえ?取替え　ようよ

おむすびは食べると　なくなるだろ
柿の種は蒔いとくと
芽が出て　葉が出て　大きな木になって
たくさん実がなるよ

〈かに〉
そんなら　取替えよう

[柿の種とおむすびを取りかえる]

さるさん　ありがと　さようなら

〈さる〉
さようなら

むしゃむしゃむしゃむしゃ　むしゃむしゃむしゃむしゃ　むしゃむしゃむしゃむしゃ
あー　あ　おいしかった

[さる、下手奥へ退場]

(C)1959 富岡正男　台本・作曲

スコア：森本晴生　所蔵