-7- 第337号  TokyuBunka Times  平成12年7月10日

小学校

笑顔の懸け橋

小学校長 福 田 景三郎

「先生、一輪車少し下げて。」
「ねえ先生、一輪車ちょっと上げて。」
「外へ出て来て。遊ぼうよ。」
「竹馬下げて。」
「一輪車の練習するから手伝って。」
「メリーゴーラウンドするからそこに立ってて。」
 朝一番の「おはようございます」のニコッのすぐあとにあちこちから早速の大事なお仕事の依頼が次次と舞いこみます。窓ガラスいっぱいの小さな手形、開ける間もなく矢継ぎ早の催促。清々しい大気の中、朝日につつまれて文化家族の楽しい一日が始まります。
 たくさんの笑顔にかこまれて、はげまされて早や二ケ月、夢のように日が経ちました。一輪車調整の道具も最初は印刷室まで取りに行っていたのですが、「早く、早く」の大合唱にせかされて早速、モンキーレンチなど工具一式を校長室に備えました。
 一輪車に乗って、この前一メートルだった真剣顔が、二メートルになり五メートルになり、中庭の反対側まで到着!ニッコリ顔がとびはねています。
「先生、空中乗り、出来るようになったんだよ、見て見て。」
「すごい!すばらしい!日本一!」
一輪車をかかえて一緒に出て来た何人かのお友だちの一団。
「手伝ってあげるよ。」
「そう、背中を伸ばして。」
「かべに背中をくっつけると乗りやすいよ。」
「上手、上手。」
「まっすぐ前見て。」
「すごいじゃん。」
「小さい方だともっと上手に乗れるよ。」
「少し下げた方がこぎやすいよ。」
 クラスの何人もの名人が、秘伝をさずけます。
 共に喜び、共に笑い、一緒に生きる喜び、うれしさが学校中にあふれています。
 三年生の投げたボール (すごくやわらかくてフニャフニャ)が、まちがって、丁度通りかかった一年生の肩に当たってしまいました。
とんできた三年生、ボールを拾う前に、
「ごめんね、痛かった?」
 と片手おがみであやまっています。最初びっくりした一年生もホッとした表情で首を左右左右。こうして人のぬくもりを大切にする文化の家族のあたたかみが今日も一つ確実に受けつがれました。おたがいの人間のあたたかさを何よりも大事にする学校家族。みんなが必ず持っているよい所を一つでも多く発見しようとする輝く笑顔。
人間だから、おたがい気になる所もあります。よい所もあります。でも必ずそこにあることが分かっている友だちのよい所を見つけるあたたかさがお互いを生かしています。このような温かいふれ合いの中でこそ、その人の個性が輝き、一人一人の自立へと大きく伸びて行くことができます。そこに居合わせることができること、教師としてこれ以上の幸せはありません。


こども こども

夢・希望・愛


小学校長・幼稚園長 福田景三郎

 咲きほこる紫陽花のような爽やかな笑顔にかこまれて楽しく働かせて頂いております。一人一人の子供たちと触れ合う時、正にこの子は世界に一人しかいない世の宝物、希望の光なのだと実感します。そして、その一人一人が違う輝きで輝くからこそすばらしい意味がある事なのだと思います。
 この輝きを大切にしながら今、神様がこの幼子をどのようにお育てになりたいのかをいつも心に留めておく事がとても大切です。日々自らを振り返る努力と共に心に銘じて参ります。
 そして教育の場において先ず大切なものは、教育の根底にある理念です。私共には、新渡戸先生、森本先生の「真理はあなたたちを自由にする」というすばらしい理念があります。この理念を子供たちと一つの大きな協同作業の実りとしていく時、次に重要なものは教員の資質です。理念を実現するにはそれにふさわしい資質、豊かな人間性が要求されます。なぜなら教育は、全人格で行うものでありその基本は人格が人格を育てる事だからです。
 豊かな人間性を身につけるためには、私は三つの(さ) が大切だと思います。(1)いつも謙虚である事。(2)いつも温かい心を持っている事。(3)いつも前向きに努力する熱心さを持っている事。つまり、謙虚さ、優しさ、熱心さです。言い換えると

  • 神様や人間の前で自分自身をごまかさないでしっかり見つめる事ができますように。
  • 共に生きている全ての生命の温かさをいつも感じることができますように。
  • いつも自分なりの努力ができますように。

という三つの願いでもあります。この三つをいつも忘れずに、いつも自分をふりかえり、この小さな文化だからこそできる温かい東京文化家族のふれあいの中で、大きな夢を子供たちといっしょに創って行きたいと思います。


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