-3- 第338号  TokyuBunka Times  平成12年12月10日

短期大学

「出産・出生のヒューマニゼーションに関する国際会議」に参加して

短大 大出春江

 11月2日〜4日の3日間にわたりブラジルのセアラ州フォルタレーザ市で開催された「出産・出生のヒューマニゼイションに関する国際会議」に参加するため、本学の助成を得て海外出張を行った。
 この会議に先立ち、州の海岸部にあるマタニティケアサービスの見学をすることも、今回の出張のもう1つの目的だった。
 この会議にはブラジルをはじめとする南米、ヨーロッパ、アフリカ、日本、北米の各国から、およそ1700名が参加し、予想を超える参加者数に、当日になってから急遽、大会議室を変更したほどだった。出席者は助産婦、看護婦、産科医、小児科医の他に、公衆衛生や社会科学系研究者、ジャーナリスト、政策担当者、と極めて学際的な国際会議となった。
 なぜ、ブラジルでこの会議が行われたのか。ここで少しブラジルについて簡単に触れておきたい。ブラジルは多くの自然資源に恵まれ21世紀の国といわれてきたが、他方ではストリートチルドレンやスラムを抱える貧富の格差の激しい国でもある。
 人々の健康水準について、1997年のブラジルの統計によると、日本の22.5倍ほどの国土に1,570万人を抱え、男性の平均寿命は63.9歳、女性は71.4歳。また小学校4年以下の学歴の人々が国民全体の3分の1を占め、地域によっては半数を上回る所もある。乳幼児死亡率は千人あたり37.5、妊産婦死亡率は十万人あたり約80である。ちなみに、日本の乳児死亡率は3.6、妊産婦死亡率は6.9である。つまりこの健康水準だけをみてみると日本の昭和30年代前後というところだろうか。
 出産の医療化は先進国においては共通の現象ではあるが、ブラジルにおいては極端な形で出現しており、極めて高率(平均40%)の帝王切開率となっている。
 こうしたブラジルの出産の医療化に対し、アメリカで産科学を学んだセアラ州出身のガルバ・アラウジョ教授という産婦人科医が「出産・出生のヒューマニゼーション」という運動を始めたことが、今回の会議開催のきっかけとなっている。この会議はまたJICAがこの地で行ってきた母子保健プログラム活動の成果を公表する場ともなっていて、日本からも50名近い助産婦さんが参加していた。 レズリー・ペイジ氏と:フォルタレーザにて
 公衆衛生医のマーズデン・ワグナー氏、ブリティッシュ・コロンビア大学で助産教育を行っているレズリー・ペイジ氏、医療人類学者のロビー・フロイト氏の報告が大変興味深かった。片道30時間近い長旅だったが密度の濃い交流が得られた海外出張となった。



家政科 家政科

女子短大生の食生活


調理学 大家千恵子

 1970年代に米国では医療費が膨大な国家予算となったのに、病人は増える一方で平均寿命は下がっている。その原因を解明するためにマクガバン議員を中心に上院に特別委員会を設置した。その結果を1977年に5000ページにのぼるレポートで発表した。その内容は要約すると(1)現代のアメリカ人の主な死因はガン、心臓病、脳卒中などの成人病(生活習慣病)でその原因は間違った食生活がもたらす「食源病」である。(2)現代の医学はクスリとメスの治療医学に偏っており、栄養に関心が薄い医学であることと報告した。この情報は全世界に報道され、「食」の大切さが見直された。さらに最も理想的な食生活を発表した。その内容はまさに日本人が今現在食している食生活そのものであった。日本型食生活が健康を維持する上で優れていることが証明され、日本食がブームになった。これは二十数年前のこ数年前のことです。
 日本の若者の食生活はどうなっているのでしょうか。数年前から女子短大生の食生活の実態を調査してきましたが、その内容は、エネルギー、タンパク質、脂質の三大栄養素はいずれも100%の充足率に達しておらず、特に食物繊維、鉄、カルシウムは56〜69%の充足率でした。その原因を考えてみると、女子短大生はダイエット志向が強く、実際のBMI{体重(kg)/身長(m2)}の値が「普通」であっても本人は太っていると思っている。家庭で料理を作ることが少なく、外食、コンビニやスーパーの惣菜やお弁当を買っている。特に自炊している学生は自宅の学生に比べ野菜の摂取に特徴がみられた。自炊生はトマトやキュウリ、レタスなど洗ってすぐ食べられる野菜を好んで食べその反対にカボチャや人参、ほうれん草など手を加えないと食べられない野菜の摂取が少ない傾向を示していた。ことなどが考えられた。また食物繊維の摂取が少ない原因はエネルギー比率中の穀物比が42%と理想値55%と比べ低く、穀物摂取の低下が一つの原因であろうと推察できた。もう一度、健康の保持に優れている日本型食生活を見直し、バランスの良い食事や生活のあり方を考えてみる必要があると思う今日この頃です。
 東京文化短大を卒業するまでに、食の専門家を目ざし、自立して欲しいと願っています。


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