-7- 第342号  TokyuBunka Times  平成14年3月10日

小学校

一年生の楽しい生活科

〜伝え残していきたいもの〜

安蔵 素乃

 東京文化小学校でも一・二年生では、生活科の授業を行っています。東京文化小学校独自のプログラムに沿って、毎年各担任がアレンジした楽しく充実した内容になっています。一年生三学期の生活科では、日本の伝承遊びや、伝統行事も取り入れています。
 「餅つき」は、毎年の伝統行事として一月中旬に行っています。炊きたての餅米の香りに歓声があがり、つきたてのお餅にお代わりの行列ができて、子とも達は大喜びです。毎年、保護者の方にもお手伝いをお願いしていますが、年々餅つきの経験がある方が少なくなってきました。地域で餅つきをしているところはありますが、ご家庭で餅つきをしているしているところは、もうほとんどないようです。こうした伝統行事を小学校で長く続けていくことで、日本の伝統を守ることになるのだと感じます。
 伝承遊びは、「犬棒かるた大会」から始めました。普段はにぎやかな教室がシーンと水を打ったように静まり、どの子も真剣です。小学校の国語でも「ことわざ」を取り扱っていますが、繰り返して真剣勝負をしているうちに自然に覚えてしまいます。日常会話の中に「論より証拠っていうでしょう。」とか、これも文化小の特色の相撲で負けて「全く、油断大敵だったよ。」とか「まあいいや、負けるが勝ちだものね。」などと、たくさんのことわざが出てきていて目論見通りといったところです。
 今年の一年生には、「こま」を一人一個ずつ渡しました。始めから紐でこまを回せた子は、三人だけでした。それでも、教室で遊んでいると次々に大半の子が回せるようになりました。「家でおじいちゃんに教えてもらった」「お父さんと日曜日に特訓したんだ。」と、家族で触れ合うきっかけにもなっている話を聞くのも嬉しいことですが、ゲームやテレビ漬けの現代っ子が多い中、暇さえあればこま回しに興じている子とも達の姿は、実に徹笑ましいものです。回せるようになった子は、手のせなどの技に挑戦しているところです。
ほら、まわった。見て。  「あやとり」をして見せると、一度もやったことがないという子がいて驚きました。「あやとり」は、一斉に教えようとしても出来るようになるものではないと実感しました。まさに手から手へ、一対一で伝え、伝承していく遊びです。
友達から、家の人から、教わりながら少しずつ出来るようになってくるのです。今、教室でちょっとした時間があると、子ども達はサッと手首に巻いたあやとりを出して器用に様々な形を編んでいきます。ひも一本あればどこでも、何人でも、楽しく遊べます。「折り紙」と同じように、日本で古くから親しまれ、多くの形が創造されてきた先人の知恵が詰まった遊びだと感じています。
 先日文部科学省に示された中教審の教養教育の答申では、幼少年期に「家庭でのテレビ、ゲームの制限」や「本の読み聞かせ」なども細かく挙げられていました。私達が当たり前の様に受け継いできた伝統や文化を、多様な社会変化で価値観が揺らぐ現代では、意識して子とも達の生活や遊びの中に伝え残していく必要性を感じています。
 この子達が大きくなった時に、また次の世代を担う子とも達のために、喜んで「餅つき」に参加し、「こま」や「あやとり」を楽しみながら教えてくれる大人になってくれることを願っています。



こども こども

「子供は光」


校長 福田景三郎


 朝日いっぱいのグランド。土が黒っぽくなる、春の吹きはもうすぐそこまで来ています。
「一、二、三、四」ラジオ体操の元気なかけ声が春の青空にどこまでも拡がっていきます。四月の頃には思い思いのポーズをとっていた一年生も、みんなそろって「一、二、三、四」とっても上手になりました。四月でも二月でも、変わらないもの、それはそのひたむき、一人一人が自分のよい所を出して光り、輝こうとするひたむきさです。
 四月は四月のひたむきさ、二月は二月のひたむきさ、このひたむきさがすばらしい。こんな無邪気で笑顔でいられることの幸せ。そのことをはっきりとは分からなくても心の中でうれしいなと感じているのでしょう。ひたむきだってことは、元々持っている自分のよい所を素直に出すことが出来ることなんですね。すてきなことを教えてくれてありがとう。
 おっかけっこに影ふみ、土埃をたてながら走り回るたくさんの笑顔。あっちではつむじのように走り、こっちではしゃがんで小石を集めている。「先生、こんなすてきな石、あったよ。」
 小さな土まみれの小石がちいちゃな手の中で踊っています。うれしそうにそっと見せてくれました。
「みんな形が違うのよ。だからね。どの石もみいんな大好き!」
「これ、一番大きいの、みゆちゃんがみつけたのに、私にくれたんだよ。みゆちゃん、てやさしいんだ。」一番大事なものをお互いに渡せる喜び。これほど大きく大切なことが自然にできること、今日もすごいことを子供から伝えてもらえました。子供が私に伝えたいこと、私が子供に伝えたいこと、これが学校の中に溢れています。このふれあいが大切なのです。


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