新渡戸稲造 その(3)
「社会ニーズと建学の精神」
学務理事 升野 龍男
「強き者でも、賢き者でもなく、最も俊敏に変化できるものだけが生き残る」。ダーウィンは「種の起源」でこう述べている。「不易流行」も同じような概念である。「易」という象形文字はカメレオンを表している。つまり「不易」とは、どんなに世の中が変化しても、ころころと変えてはいけないことを意味する。逆に、「流行」は変わるもの、状況変化に従ってどんどん変わっていくもの、あるいは変えていかなければならないもののこと。「変化こそ常態」という考え方である。
教育を取り巻く環境変化は激しい。「勤しむ双手、活く頭、寛き心」という3 H 精神の目指すところも、いま短大が標榜しているように「いのち、やさしさ、おもいやり」といった方が時代にマッチしている。3 H 精神の実践は、この社会ニーズに対応するために必要不可欠な心構えと考えればよい。哲学者・梅原猛は「真理とは、その時代に最も説得力持った仮説である」と語っているが、その通りだろう。「真理は汝を自由にする」だけでは解りにくい。それよりも、「目からウロコの落ちる考え方や論理に出会う喜び」の方がピンとくる。そうすれば授業は「面白授業」や「わくわく授業」になる。
「建学の精神」などと金科玉条のごとくあがめていると、いつの間にか時代からそっぽを向かれてしまう。
建学の精神を時代に合わせて翻訳し直し、活火山のように情報発信してゆく。これが「新渡戸・森本研究所」の役割である。今年の学園祭のテーマも「[新]たに[渡]る[戸]を開こう」に決まった。
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